「次世代を担うエンジニアたち」では、日本のソフトウェア産業の未来を担うエンジニアたちにフォーカスし、新時代のエンジニア像を明らかにしていく。
第22回では、オープンソースの分散Key-Valueストア「kumofs(くもえふえす)」を開発している筑波大学大学院の古橋貞之氏に話を伺った。
-kumofsを作ったきっかけとは?
衛藤バタラさんが設立した「えとらぼ株式会社」から、分散ストレージを作ってみないかという話があり、開発し始めたのがkumofsです。
kumofsは、ブラウザ上で写真を加工したり、共有したりできるFicia(フィシア)というサービスで使われています。写真のメタデータを管理するために、開発されました。
-kumofsの特徴とは?
ベンチャー企業など、最初から投資はできないため、小さいシステムで始めたいというニーズがあります。しかし、近年ではヒットするとすごい勢いでユーザが増えていくため、最初から、スケールアウトを想定した設計のものが求められています。
kumofsのような分散ストレージは、システムを止めずにサーバを追加したり、例えば1台がクラッシュしても、システムが問題なく使えるという特徴があります。
kumofsは、「Ficia」や「ニコニコ動画モバイル」などで使われています。
-参考にしたプロダクトは?
memcashdです。kumofsはmemcashdと同じプロトコルを使っていて、アプリケーション側から見ると、kumofsはキャッシュのように見えるシステムです。
-インフラに興味を持ったのは?
未踏ユースの際に、V-FIELDという分散システムを開発しました。ボタンを長押しして電源を落としても、システム全体は動き続けているのを実際に見たら、非常に面白く感じたのがきっかけです。普通のパソコンではあり得ないことですから。
-ITに興味を持ったきっかけは?
あるニュースサイトで、高校生がCDから起動するLinuxを使って、教育用のシステムを構築したという記事を見ていたら対抗心が芽生え、自分でもできると思い作ったのが最初です。
記事のシステムには課題があり、CDをサーバの枚数分作成する必要がありました。それをネットワーク経由でやれば、CDを作成する課題が解決すると考え、実際に開発したらできてしいまいました(笑)。
-最近、気になっている技術はありますか?
ソーシャルゲームの裏側では、さまざまな統計処理がされています。データの量が増えていくと、その価値は上がります。その処理にHadoop(ハデゥープ)が使われているそうです。今はHadoopとの連携できる何かというが気になっていますね。
-好きなプログラミング言語や技術は?
分散技術が好きです。kumofsを開発する過程で、多言語で通信できるインフラとしてMessagePackを開発しました。MessagePackの特徴は、異なる言語で書かれたプログラムの間で通信ができるようになる点です。例えば、Javaで書かれたアプリケーションと、C++で書かれたサーバプログラムと、Rubyで書かれた管理ツールの間で、相互にオブジェクトをやりとりできるようになります。従来はHTTPとXMLを使うとか、実装が面倒になった上に動作も重くなってしまったのですが、MessagePackを使うとシンプルに実現でき、そのうえ高速に動作するというわけです。
MessagePackは、はてなブックマークや日経BP社のサイトの検索サービスに使われている「Sedue(セデュー)」や、「アメーバなう」「セカイカメラ」、海外での利用事例があります。
-注目しているエンジニアの方はいますか?
平林幹雄氏です。軽量データベースサーバ「Tokyo Tyrant」をはじめとしたTokyoシリーズを作った方です。最近、新しくKyotoシリーズを開発し、ライセンスビジネスをはじめています。ビジネス的に成功してほしいと思っています。
また、作り始めてから、リリースするまでの期間がとても短い点が凄いと感じています。
-これから立ち上げるサービスはありますか?
MessagePackを基板とした「MessagePack Platform」というのを開発しています。分散並列処理を前提としたミドルウェアで、現在はその1つ1つのパーツを作っているところです。
-5年後、どのようなエンジニアになりたいですか?
新しいものをずっと作り続けていきたいですね。また、自分が作った分散のシステムをいろいろな人に使ったもらいたいという思いがあります。
kumofsは、Sedueだけでなく、セカイカメラでも使われています。kumofsは、オープンソースで社会貢献的な側面があります。今後もそのような世の中を幸せにするシステムを開発できれば考えています。また、開発を続けられるような地盤を作っていきたいですね。
■プロフィール
筑波大学 大学院 システム情報工学研究科
古橋 貞之(1987年生まれ)
愛知県出身。分散ストレージシステム「kumofs」をはじめ、様々な基盤ソフトウェアの設計を手がける。
高速メッセージングシステム「MessagePack」を開発し、OSSとしてリリース。ソフトウェアで世界制覇を狙う。
2006年度 IPA未踏ユース スーパークリエーター認定。2010年度 日本OSS奨励賞受賞。
■参考リンク
・古橋貞之の日記
・The Kumofs Project
・えとらぼ株式会社
・株式会社プリファードインフラストラクチャー
・FAL Labs




